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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

新源氏物語

  • 2024/10/11 06:21
  • カテゴリー:読み物

わが男友達カモカ氏は、読んで退屈きわまりないところがある、源氏物語は女のおしゃべりの集大成みたいなもんで、一千年の間、面白いといって読んできたのは女だけやないか、なんて珍説を申し立てております

田辺聖子著「新源氏物語」下(新潮文庫、1984年、改版2015年)に所収された著者のエッセイ「『源氏物語』とつきあって」から(p513)。末尾に「波」昭和53年12月号よりとある。

「女のおしゃべり」なのだから、もちろん、「かなり男を見て、よく観察している」「男の心理、生理を見事にとらえている」。原著者の紫式部は、かなり親密な「男友達を年代別に沢山もっていたんじゃないか」と著者は推察する。そう思わせるほどに、男のことがよくわかっている。

誰か男性が、例えば藤原道長が、手伝ったという説があるけれど、そうじゃないだろうと著者は書く。道長は、雑駁で、細かい心理の綾は面倒くさい。それに、もし道長が手伝っていたら、「政治の場面がもっと増えたに違いない」と。

著者には源氏物語の現代語訳が複数あるらしい。この「新源氏物語」はその一つ。全巻は訳出されていない。第3帖「空蝉」から始まって、光源氏が出家を決意する第41帖「幻」で終わっている。

光る君へ田辺聖子(いずれもサイト内)

千夜千冊虎の巻

  • 2024/09/24 05:48
  • カテゴリー:読み物

二・二六の青年将校が聴いていた歌謡曲や小唄など、知識人にはまったく勘定に入っていないんですね。つまり、政治論はあっても芸能論がなく、身体論はあっても手の伸ばしや足の引きがなく、知識論はあっても目の寄りや耳の伏せがない。こんなことではいくら東京裁判を議論しても昭和のことはわかりませんよ。

日本の近現代思想史というものは、概しておそろしく貧しい、とお怒り。「その時代のメインアートや民衆の芸能やマイナーアートを見ていない」、「日本の歴史的現在に関する歴史感覚が鍛えられていない」。

松岡正剛著「ちょっと本気な千夜千冊虎の巻」(求龍堂、2007年)から(p299)。本書は大部な「松岡正剛千夜千冊」のアウトラインをざっと紹介するとともに、副題に「読書術免許皆伝」とある通り、読書術、読書法についても語っている。例えば、目次読書法の極意という小見出しはp244に見える。

市立図書館のOPACで「千夜千冊」を検索するとこの本もヒット。本編全7巻の前に、虎の巻を読んでおくか、と借りたわけだけれど、もうこれだけで満腹感がある。本編は一から順だと挫折しそうなので、まずはアートを採り上げた第6巻「茶碗とピアノと山水屏風」でも最初に見てみようか。

松岡正剛さん死去(サイト内)

竹取の翁

  • 2024/09/17 05:53
  • カテゴリー:読み物

万葉集のこの歌は、長寿を祝福している、と誰かが言った。20年ほど前のこと。敬老の日のきのう、そんなことを思い出した。この歌というのは、竹取の翁が9人の美しい乙女に出逢う場面を詠んだ長歌。

その歌(巻16-3791)をあらためて眺めてみた。これには、どう読むのか定まっていない箇所がいくつかある。けれど、大意はつかめる。今はすっかり老いてしまったが、幼い頃は大事にされ、誰しもが振り返る美男子に育った。女性にも、もてた、と翁が語る。

そして、最後の部分。それなのに、情けないことに、今あなた方からは、どこのじじいかと侮られる、と嘆く。続いて、孝行息子の故事が引用されて終わる。つまり、この歌は、老人をからかったりしてはいけない、大切にせよ、と歌っている。

この歌の解釈についてwebで探した。金という方がこう書いている。「青春の美しさはほんの一時のかりそめの姿に過ぎず、人は誰でも年を取って老いるのであるから、老人の醜さを嘲笑してはならないというところにある」と。

長寿を祝福している、と誰かが言った。そう言われてみると、そうなのかもしれないと思うけれど、ちょっと違うような気もする。

万葉集(サイト内)。巻16-3791|万葉百科、金文京, (2024), 『万葉集』の「竹取翁の歌」と「詠水江浦嶋子」について, 万葉古代学研究年報, 22, 123-131、子供叱るな来た道だ老人笑うな行く道だ

雪月花

  • 2024/09/10 06:00
  • カテゴリー:読み物

江戸の俳句の場合、劇的にしたい第三者が、別人の作を誰かにくっつける。そうやって《伝説》を作る。ポピュラーな作には、あることです。

北村薫著「雪月花-謎解き私小説」(新潮社、2020年)から(p133)。

「雪の日やあれも人の子樽拾い」も、作者がすり替えられてしまった。備中松山藩主・安藤信友の作ではない、これは専門家にはわかっていたことだった。著者の北村さんは、高木蒼梧「俳諧人名辞典」(巌南堂書店、1960年)を引用している。そこには、真の作者は水間沾徳、と明記されていると。「真蹟」もあるらしい。

水間沾徳は、芭蕉十哲の一人宝井其角亡き後の江戸俳壇の重鎮だったとか。その人の作とするより、雪の日に大名が籠から外の様子を眺めて詠んだとする方が趣がある、と、どこかの誰かが考えた。「表には出ない創作者である」と著者は書く。

雪の日やあれも人の子樽拾い(サイト内)。本にまつわる“謎”を追っていくと、本から本へ、思いがけない道すじがつながっていく――。

女ぎらい

  • 2024/09/04 05:59
  • カテゴリー:読み物

「こいつはね、オレのこれがよくて、離れられないんですよ」と言ってみたい-と思わない男はいないのじゃないだろうか。

これには笑った。上野千鶴子著「女ぎらい」(紀伊國屋書店、2010年)から(p14)。本書の副題は、ニッポンのミソジニー。ミソジニーは、女性嫌悪や女性蔑視と訳される。

「実際の女の快楽はこんなに便利(つまり男に好つごうな)ものではない」と続く。あまりにもこの種の幻想が流布されている。「吉行はそういう性幻想をまき散らかした戦犯のひとりである」。吉行とは吉行淳之介のこと。

吉行は、「やがて日本の文学史から忘れ去られるかもしれないマイナーな作家」と著者は断ずる。「かもしれない」は編集者が書き加えたのではないだろうか。

男と女(サイト内)。misogyny、佐野真一著「東電OL殺人事件」

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