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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

禁忌

  • 2021/05/29 06:51
  • カテゴリー:読み物

説明には、つねに別のバージョンがあるものだよ

ビーグラー弁護士が、ランダウ検察官にそう言う。フェルディナント・フォン・シーラッハ著「禁忌」酒寄進一訳(東京創元社、2015年)から(p207)。

本作の評価は賛否両論に分かれたと訳者あとがきにある。Die Zeit で「二度読んでも理解できなかった」と評されたとか。確かに、読み終えてすぐには何のことか判らなかった。ちらちらと読み返して以下のような理解に至った。

これは、主人公エッシュブルクと彼の異母妹、二人による狂言犯罪だ。法廷で新たなインスタレーションを発表することを目的としている。如何に芸術表現とは言え、神聖であるべき場を虚仮にするのはいかがなものか。書名のタブー(禁忌)はそこから来ている。

主人公は、このインスタレーションで「自画像」(p219)を描こうとした。ティツィアーノが筆ではなく、直接、指で自画像を描いたように、写真家の主人公が写真ではなく自身が出演するインスタレーションでの表現を試みた。一回限り、ぶっつけ本番の自作自演には、数か月に及ぶ勾留付き。

隣人セーニャ・フィンクスは、主人公だけに見えていた。本人には真実だったけれど、現実には存在しない架空の産物(スフィンクス、p210)だ。それを典型として、主人公が半生を供述する前半部分は、「真実と現実」(p153)が綯い交ぜになっている。その整理役としてビーグラー弁護士が起用された。

刑事による拷問の件は、インスタレーション作品には計画されていなかった部分。ビーグラー弁護士が法廷で「うまく利用」(p219)し、作品に花を添えることになった。

シーラッハ(サイト内検索)。公判での刑事への証人尋問(p188-203)

ゼロからつくる科学文明

  • 2021/05/27 06:13
  • カテゴリー:読み物

応急処置は、医療スタッフが駆けつけるまでのあいだ、怪我人などの状態を効果的に安定化するために考案されました-あなたが今ある特殊な状況では、医療スタッフが来るまでに数百万年かかるかもしれませんが。

あちこちで、くすっと笑わせてくれる。ここでは大笑い。ライアン・ノース著「ゼロからつくる科学文明-タイムトラベラーのためのサバイバルガイド」(早川書房、2020年)、第15章「基本的な応急(あなたの場合、唯一の)処置」から(p427)。図書館で予約して3か月ほど待って順番が巡って来た。

タイムマシンを駆って過去に遡るのだが装置が故障してしまい、もう元には戻れない。さあどうする。「ご安心ください」「必要なものは、このガイドに全て載っています」。目次に続いて、「あなたがどの時代に閉じ込められたかを判別する方法」から始まる。

2020年今年の一冊|HONZ。トーマス・トウェイツ「ゼロからトースターを作ってみた結果」、ルイス・ダートネル「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」

Re: 愛読書十選

  • 2021/05/26 06:27
  • カテゴリー:読み物

かつてこのホームページに併設していた掲示板 "Etwas Neues" で、無人島へ持って行く本が話題になったことがあった。それを思い出しHDD内を検索。1998年12月のログにあった。以下はその時に選んだ10冊。二十数年隔てた今回の十選(その1~3)と、ちらほら重なりがある。

「トランプ-ひとり遊び88選」野崎昭宏
「蝉しぐれ」藤沢周平
「宇宙からの帰還」立花隆
「こころ」夏目漱石
「梶井基次郎全集全一巻」(ちくま文庫)
「中島敦」(ちくま日本文学全集)
「新唐詩選」吉川幸次郎、三好達治
「ピアノ協奏曲集11~27番」モーツアルト
「フィガロの結婚」モーツアルト
「魔笛」モーツアルト

モーツアルトの3つは、オーケストラのスコア。

# bulletin board system(BBS)。愛読書十選ビジネス書十選(いずれもサイト内)

過去をもつ人

  • 2021/05/25 06:29
  • カテゴリー:読み物

時の流れが、はやい。すぐ昔のことになっていく。過ぎ去ったものが厚みをまし、世界をつくりつづける。過去の新しい見方、読み方も必要になるだろう。

荒川洋治著「過去をもつ人」(みすず書房、2016年)、あとがきから(p223)。

「漠然とでも全体をとらえられるかどうかにかかる。おおまかな風景を、大きな袋に入れる。それが果たせるかどうかに尽きる」(同所収「銅のしずく」から、p83)

「この日本に、このような著作が存在すること。それを知るしあわせを読む人は感じることだろう」(同所収「雨の中の道」から、p216)。足立巻一著「やちまた」のことを言っている。

足立巻一(サイト内検索)。「天気予報の都市」p205。中野重治、井伏鱒二、丹羽文雄、林芙美子、伊藤整、石川達三、高見順、太宰治、三島由紀夫、黒島伝治、木山捷平、深沢七郎、長谷川四郎、尾崎翠、耕治人

紀ノ川

  • 2021/05/22 07:28
  • カテゴリー:読み物

旧時代ノ因習ニ添ッテ揃エラレタ嫁入道具ノ多クノ無駄ヲ整理返却シタ理由デアリマス」。母親の整えたものの中に必要のないものがあって手狭な新居には邪魔だから折角だが送り返すというのと、内実は同じでも表現の、いや精神の、なんという違いだろう。

有吉佐和子著「紀ノ川」(新潮文庫、1964年、1990年改版)から(p187)。ラジオの朗読を聴いて興味を持ち図書館で借りた。

畑は違っても穫れるものは同じ、と、あるベース奏者が言ったことがあった。ふとそんなことを思い出した。

# 朗読「紀ノ川」(24)【作】有吉佐和子【朗読】藤田三保子(NHKラジオ第2、4/29)

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