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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

蝦夷地別件

  • 2021/10/26 06:22
  • カテゴリー:読み物

地道に何かをやりつづけるやつにはだれも適わねえってことさ。おれはそこそこの小まわりは利くが、ただそれだけのこった。おめえさんみたいに地に足をつけてじぶんの考えをじっくり押し進めていくなんて芸当はどう転んでもできねえ

厚岸で養生所を開く洗元に向かって、無頼の徒のような静澄が言う。船戸与一著「蝦夷地別件」(新潮文庫、1998年)から(上巻p438)。大部な文庫本全3巻、原稿用紙で2.8千枚の巨編。読み終えるのにだいぶ日数がかかった。

洗元と静澄、彼ら僧侶二人は長生きする。他の主要な登場人物、例えば、松前藩の番頭、幕府の間諜、国後アイヌや救国ポーランド貴族団の面々が、ばたばたと逝ってしまうのとは対照的だ。

六十数年経ち、静澄は、また、洗元と自分とを対比する。「行動する人間はたえず何らかの戒めと向きあわざるを得ず、観察する人間は踏み外すべきかどうかをみずからに問うべき戒めを持っていない」(下巻p670)。自分は、時の流れを傍観しただけでそこから何も得ることがなかった。やるべきと思うことをやり抜こうと「炎のように生きた」洗元が眩しかったと吐露する。

# 広敷添番御庭番、新井田孫三郎の長曾禰虎徹、葛西政信の備前長船盛光

本当は怖い動物の子育て

  • 2021/10/19 06:39
  • カテゴリー:読み物

そして子が一歳以上三歳未満になると、ついに最大のリスク要因である、実母の内縁の夫(マムズ・ボーイフレンド。母の交際相手)が主たる加害者として登場します。

児童虐待死の主たる加害者は誰なのか。竹内久美子著「本当は怖い動物の子育て」(新潮新書、2013年)から(p167)。内縁の夫がある意味ヤバい存在であることは、統計上、はっきり、表れている。

厚生労働省のサイトに掲載されている、その統計「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」、本書では、その第8次報告に拠っている。念のため最新(2021年8月)の第17次を見てみた。第1次から第17次までに検証の対象となった虐待死(心中以外)は計842例。その主たる加害者(単独犯)は、実母(54.4%)と実父(15.4%)であり、それに次ぐのは、やはり、実母の交際相手(4.5%)だ。試しに平均してみると、虐待死は年に50例起こり、内2例は実母の交際相手(内縁の夫)が加害者(842÷17×4.5%)、ということになる。

「大阪3歳児殺害」(サイト内)。子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第17次報告)|厚生労働省。第11章の5つの事例。

兵士に聞け

  • 2021/10/12 06:31
  • カテゴリー:読み物

見えないものに怯えているというか、逃げを打っているというか、要するにストレートでも変化球でもなく、敬遠策なのである。

著者のインタビューを受けることになっていた自衛官が姿を見せなかった。取材を受けないよう、上官から指示が出たのだった。待ち合わせの場所に近づくこともないようにと。引用は、杉山隆男著「兵士に聞け」(新潮文庫、1998年)から(p442)。

研究所のメンバー数人が選ばれて人事部によるインタビューを受けたことがある。どういう名目だったかは忘れたけれど、現場の様子を生の声から知ろうとしたのだろう。人選は無作為、全社で実施、と説明があった。インタビューの数日前に所長から呼び出された。私が対象者であることは職制に伝えられていたのだ。所長が語るのは遠回しな表現ではあったけれど、その意図はすぐに判った。要するに、弁えろよ、だ。本音は、その自衛官の上官のように、インタビューを阻止したかったのではなかったか。「おまえじゃ何を言い出すかわからない」と。

文庫100冊(サイト内)

雪中の奇跡

  • 2021/10/05 06:31
  • カテゴリー:読み物

このフィンランドのスキーのストックは日本から輸入された竹でできていた

梅本弘著「雪中の奇跡」(大日本絵画、1994年、新装版)から(p39)。1939年11月から翌年3月まで続いた冬戦争(talvisota、第一次ソ芬戦争)の記録。

遠い国の戦いに多少なりとも日本の産物が関係していた。竹のストックばかりか、三八式の歩兵銃や15cm榴弾砲、「呉海軍造幣廠で明治三十一年に製作」のアームストロング沿岸砲も登場する。驚いた。

# 芬蘭、フィンランドを意味する旧い表記。「雪の進軍」、「フィンランディア」

Re2: 文庫100冊

  • 2021/10/01 06:26
  • カテゴリー:読み物

村上自身が「村上春樹」というブランド名によりかかって、ようするに読者を舐めてるんだな、と思い、読むのをやめた。

私も、もうやめようと思う。引用は、勢古浩爾著「定年後に読みたい文庫100冊」(草思社文庫、2015年)から(p430)。

既に熱心な読者ではなくなっている。出版されてだいぶ経ってから古本や図書館で借りた本を読むに過ぎない。彼がもしノーベル賞をとるようなことがあった折、私も一読者です、と思える方が良いような気がして、ぼつぼつと読み続けて来た。そういうことかもしれない。私が「これほんとにおもしろいのかね」(p430)と感じるようになったのは、「ねじまき鳥クロニクル」あたりからか。手元に「国境の南、太陽の西」がある。私にとって、「村上春樹」は、この一冊で十分だ。そういえば、村上Radioもすっかり聞かなくなった。

村上春樹(サイト内検索)。ノーベル賞、2021年の注目候補者は(9/30)

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