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カテゴリー「読み物」の検索結果は以下のとおりです。

出口のない海

  • 2025/01/15 06:02
  • カテゴリー:読み物

十四、五メートルはある。具体的な数字が思い浮かんだのは、胴体の長さがピッチャーズプレートからホームベースまでの距離より数メートル短いだけと感じたからだった。

大学の野球部でピッチャーだった並木は、人間魚雷「回天」を見て、そんな風に大きさの見当を付けた。横山秀夫著「出口のない海」(講談社文庫、2006年)から(p158)。

「回天」の発進準備が紹介されている(p196)。電動縦舵機の起動スイッチオンから始まり数え切れないほどの過程が並ぶ。約5分のあいだに、26のハンドルと弁を操作してそれらを進めるのだとか。

発進準備にさえ複雑な操作がなされるのだから、航行中のそれは推して知るべし。回天記念館の説明文に、「操縦は非常に難しく、訓練中の事故も頻繁に起き」とある。本書の主人公である並木少尉も訓練中の事故で命を落とす。

足立巻一著「虹滅記」にも、訓練中に事故死した搭乗員の名が出ていたように思う。著者が山口県大津島の回天記念館を訪ねた折、誰かが話す中に登場していた。その名は並木だったような気もするがどうだろう。今一度、「虹滅記」を開いて確認した。「黒木少佐が沈んだのはあのあたり」(p158、朝日文芸文庫版、1994年)。記憶違い。

虹滅記(サイト内)。人間魚雷「回天」とは|山口県周南市回天記念館

紫式部の欲望

  • 2025/01/09 05:56
  • カテゴリー:読み物

源氏物語において、正妻をほとんど無視し、正妻であることの虚しさを描いたことは、紫式部の、正妻という存在に対するちょっとした復讐だったのかもしれません。

そう言えば、大河ドラマ「光る君へ」で、まひろ(紫式部)が、自身と藤原道長との不義について、道長の正妻である倫子に直接語る場面があった。訊ねられたから答えたとはいうものの、正妻を痛めつけるなかなかエグい展開だった。

引用は、酒井順子著「紫式部の欲望」(集英社、2011年)から(p165)。最寄り図書館で借りて来た。

正妻に復讐したい、頭がいいと思われたい、選択したい、娘に幸せになってほしい、乱暴に迫られたい、など、「紫式部の欲望」を彼女の著作から読み解く。なかなか面白い。

紫式部は「道長のお手つきとなったとも言われ」、「道長とのラブ・アフェアもあったようですが」、「藤原道長と一時交際があったという話ですが」と、道長の名前がちらちらと登場する。朧月夜に迫った源氏のように、道長も迫ったのかもしれない。「時の第一の権力者が、自分という女をこれほどにも強く欲しているという状態に、紫式部はうっとりしたに違いない」(p115)と著者は書いている。

光る君へユーミンの罪(いずれもサイト内)

悲しみは憶良に聞け

  • 2025/01/08 05:54
  • カテゴリー:読み物

歌ではないし、詩でもない。漢詩ですらない。全五段落からなる、長い散文です。それゆえ「国歌大観」の番号が振られておりませんが、八九六番と八九七番のあいだに載っています。

山上憶良が書いた漢文、いわゆる「沈痾自哀文」。万葉集でのその特異な位置付けが説明されている。中西進著「悲しみは憶良に聞け」(光文社、2009年)から(p76)。最寄り図書館で借りた。

その長い文章の中で、憶良はこんなことを書いている。74歳の老体で、長い間、病に伏せている。病の苦しみを背負い、命は尊く重いものということがつくづく判った。けれど、その尊さをどう表現すればいいのだろうか。思いめぐらそうとしても、思い続けることができない。「何に由りてか之を慮らむ」と。

これまで憶良が書いたものを丁寧に読んだことはなかった。この歳になって、じっくり向き合ってもいいかなと思う。この「沈痾自哀文」や「貧窮問答歌」あたりから始めるのが良いだろうか。

山上憶良(サイト内)。寺川真知夫著「沈痾自哀文と患文」|奈良県立万葉文化館

朕、惟フニ

  • 2025/01/07 05:48
  • カテゴリー:読み物

朕、惟フニ屁ヲ垂レテ、汝、臣民、臭カロウ、国家ノタメナラ我慢セヨ

源氏物語を読んだ一条天皇が、「これは朕への当て付けか」などと人間臭いことを言うのを聞いて、このパロディを思い出した。

この教育勅語のパロディは、月刊誌「面白半分」で見た、と思う。中・高の頃、ナンセンスを教えてくれたのは、ほかには考え難い。当時、熱心にページを繰ったものだ。

「海行かば」の替え歌も同じ頃に知った。おそらく「面白半分」で。「海にカバ、水漬くカバね、山にカバ、草むすカバね、おお、君の屁にこそ死なめ」。これにも屁が登場。

元の詞は大伴家持の長歌(万葉集、巻18-4094)からの抜粋であることを(再)認識したのは随分あとになってからのことだった。

光る君へ海軍めしたき物語(いずれもサイト内)。鵜野祐介著「アジア太平洋戦争中の日本の子どもの替え唄-笠木透の替え唄研究」前編後編巻18-4094|万葉百科 奈良県立万葉文化館

戦略は歴史から学べ

  • 2024/12/04 06:06
  • カテゴリー:読み物

「消費者のすべての購買行動の入口を支配する」。これはスマートフォン業界や現在のロボット産業では、ごく当たり前に想定されている目標なのです。

その領域を支配しようとする者が考えていることは凄まじい。鈴木博毅著「戦略は歴史から学べ-3000年が教える勝者の絶対ルール」(日経BP、2022年)から(p307)。

突飛な目標を持つ側には、常識に捉われる側にはない戦略眼がある。彼らはその突飛な目標ゆえに、より多くの情報を知りたがり、変化に反応し、敵の弱点を執念深く探し、分析レベルと幅が他者には想像できない領域に達する。

三田図書館(港区)で読んだ。昔よくお世話になったこの図書館が新装なったことは噂に聞いていた。この度の上京に際して訪ねてみた、少し時間をつぶす必要もあったので。

東京、24年11月(サイト内)。「戦略とは本来、未来を見つめるための道具」

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